近年、児童虐待や餓死をして死亡してしまう子どものニュースが取り上げられることが増えてきている。
子どもの貧困や虐待は、深刻化してから「事件」として表に出てきてしまう。
しかし、そうした子どもや家庭が深刻になる前に、何かしらの支援につながり、改善していくことができないのだろうか。多くの支援者たちが、そうした子ども達を早期発見しようと日々活動に取り組んでいる。
私たちNPO法人PIECESでは、兄弟や友達のような立ち位置で子ども達と近い距離で、悩みや興味関心に寄り添う支援者を育成している。こうした支援者をコミュニティユースワーカーと名付けて育成している。
支援機関よりも身近なお兄さん、お姉さんを育成し、子ども達が抱えている課題が深刻かする前になんとか出会い、支援に繋げようとする取り組みである。
私たちは、子ども達にとって身近な存在であることから、子ども達のコミュニティに入っていくことができる。
ひとりの支援対象者と出会うことができれば、その子の周りにいる「友人」にリーチすることができる。
「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、対象となる子ども達の周りには、似たような課題を抱えている子が多い。
子ども達と仲良くなり、子ども達のコミュニティに入って、直接子ども達と繋がるこのアウトリーチ方法を「芋づる式アウトリーチ」と呼んでいる。
私たちは、こうしたアウトリーチの方法以外にも、様々な方法でアウトリーチをし、まだ支援につながっていない子ども達を見つけていきたいと考え、今回アウトリーチ研修を企画した。
講師は、インターネット広告などを通じて、ハイリスクの自殺者にアウトリーチをしている革新的な取り組みをしているNPO法人OVAの伊藤次郎さんをお招きした。
伊藤次郎さんは、日本財団のソーシャルイノベーターにも選出されており、アウトリーチャーを数多く輩出していくことに力を入れていくそうだ。
アウトリーチの実践的な研修をこうして体系立ててお話しできるのは日本には伊藤次郎さんしかいない。
そんな伊藤次郎さんからアウトリーチの定義から具体的にアウトリーチをしていくために、アウトリーチのデザインまで研修していただいた。
私たちの業界では、アウトリーチという言葉は何気なく使っているが、いざ定義を聞かれると困ってしまうことが多い。
こうしたそもそもアウトリーチとは何か、をしっかり学ぶ機会となりました。
次郎さんはマーケティングの視点が必要で、私たちが届けたいものではなく、ユーザーの視点に立って考えることが大事だと話していた。
座学の研修だけでなく、ワークショップも実施。
「徹底的にユーザーの視点に立って考える」
私たちが支援を届けたい人たちが、日々どのような生活をしていて、朝どのように起き、何を食べ、どこにいき、どんな情報を目にしていて、どのように家に帰り、家に帰ってどのような生活をしているのか、
徹底的にユーザーの行動を洗い出すことを行なった。
なかなか支援につながらない人たちに、いかに支援を届けるか、彼らの日常にどのように支援を差し込んでいくのか、実際にシートに書き込んでいった。
私たちは、一方的にこうした支援をした方が良いと思い込んでしまうことが多い。
しかし、今回の研修を経て、本当にこのような方法で良いのだろうかと改めて考え直すくせがついたように感じる。支援を届けたい人たちの顔を浮かべながら、実際の生活を浮かべながら、どのように届けていくか、「ユーザー視点」がとにかく大事だと教わった。
こうした研修を経て、CYWの日々の態度が変わったように感じた。
子ども達の日常に目を配り、彼らがどのような日々を過ごしているのか、そうしたところまで目を配らせるようになったように感じている。
実際に、日々どのようにアウトリーチしていくかのディスカッションも行なわれている。
伊藤次郎さんの知恵を今後も借りながら、私たちもアウトリーチャーの輩出に少しでも貢献できたらと思った。