コミュニティユースワーカー活動報告

NPO法人PIECESが運営するコミュニティーユースワーカーの活動報告ブログ

立場を越えて、誰かの人生にとっての幸福を真摯に考え抜く「検討会」

◆目次

1)はじめに

2)検討会の背景
3)参加者の多様性
4)検討会の在り方
5)検討会についての参加者のコメント

◆はじめに
コミュニティ・ユースワーカー(以後、CYW)1期生の坂牛です。
10月22日の2期生募集説明会の後に、子ども・若者との関わりについて、多様な参加者によって構成される事例検討会を開きました。当初企画した内容を乗り越えていく形で素晴らしい会となりました!また、結果的に「PIECESらしさ」が色濃く映る会にもなりました。今日はこの検討会についてご報告させていただきます。

なお、今回検討した内容の「その後」については、3か月後ごろに再度に検討会を実施するか、座談会を開くかなどして、何かしらのアクションを継続的に起こす予定です。また、今回の「検討会」は新たな発見に溢れたものだったので、固有の名前も考えていきます(参考のため、名前を募集させてください!)。

◆検討会の背景
検討会を開くきっかけは、私自身がCYWとして子ども・若者たちと関わっていく中で、様々な葛藤や迷いに直面したため、外部から専門家をお呼びして事例検討を行いたいと思ったことです。「関わっている相手にとっての幸せとは何だろうか」「どのような関わり方がよいのだろうか」「CYWだからこそ担える役割はなんだろうか」という3つの大テーマを掲げ、1人についての詳細な事例検討を3時間にわたって行いました。検討会を通して、CYWや専門家の視点の特徴、寄り添いの在り方について、深く学ぶことができました。

◆参加者の多様性
特筆すべきは参加者の多様さです。CYWはもちろん、企業に勤めている方や弁護士、精神保健福祉士、大学の学部生、就労支援経験のある方など、様々な属性のある方々にお集まりいただきました。加えて、PIECESからは児童精神科医である代表の小澤さんを初めとして、ソーシャルワーカーである斎さん、大学院生でPIECESのプログラムを設計している青木さんたちも、議論に加わってくださいました。

◆検討会の在り方
検討した内容はここに報告することはできませんが、「検討会の在り方」それ自体について、私の感じたことを2点述べさせていただきます。

a)誰もが参加できる「コミュニティ」の創発

検討会では、本人にとっての幸せとは何かや寄り添いの在り方について、立場にかかわらず意見を交わすことができました。

私がとても興味深く感じたのは、専門的な支援職についている参加者たちが、「専門的な視点以外からの意見が参考になった。自分の仕事においても学びとなった」と述べていたことです。

もちろん、専門的視点があるからこそ、現状に対する適切なアセスメントやリスク評価が可能になり、ひいては適切な支援が可能になります。しかしその視点では逆に、特に医療の現場においては、リソースに限りのある状況の中で相手を捉えることで、最低限の処置案しか提示されなかったり本人が活用できるリソース自体を増やすアイデアが出てこなかったりするようです。

この度の検討会には、複数の専門領域どころか、専門的な知識やスキルを持っていない参加者もいました。印象的だったのは、誰かの幸せを検討する上で、参加者一人一人の持つ強みと資源が活かされていた会だったことです。

問題や困難に対応することについて、多くの人に、専門的な知識やスキルがないいけないんじゃないか、という感覚があるように思えます。社会問題に関心はあっても、具体的な行動をするまでに思い切れない人がたくさんいると思います。でも、誰かの幸せを願うときに、専門的な視点が役立つことはあれど、出来るだけ多様な視点からの意見が共有された方が新しい気づきと発想に出会えるのではないでしょうか。

現代では課題を解決するにあたって、専門家と「素人」が分化され、専門家内でも様々な領域へと分化されるという、「無力化と分断」の状況があります。それに対して本検討会では、専門家と素人同士が分かたれるのではない、多様な属性を持つ市民としての人びと同士が知恵を持ち寄り合ってつながる「コミュニティ」ーーそんな雰囲気を抱きました。

b)誰かの幸福をともに考える場

複数の参加者から、「一人のことについて、こんなにも濃密に考えて話し合いをすること自体がすごい。自分自身が検討されたい!」という発言がありました。考えてみれば、このような検討会は何も障害を持つ人のサポートに限らず、ありとあらゆる人の幸せを願う場において重要なのではないかと考えています。

例えば、自分自身の人生のことを意思決定するとき、あるいは困難に直面したり悩みを抱えていたりする時、あなたは誰に相談しますか?進路決定などは、家族や学校の先生、複数の友人にしか相談しないことが多いのではないのでしょうか。もしかしたら、ほとんど相談せずに決めてきた、解決してきたという場合もあるかもしれません。

もちろん、意思決定しようとする度に本格的な事例検討会をいつも開く必要は無いと思います。しかし、考えても悩んでも迷いが残る時には、一部の関係者(先生、親)や、類似性や共通点のある者(友人など)にだけ相談するのではなく、複数の、なおかつ多様な者同士で考える方が、いままで思いつかなかった気づきや発想に至るのではないでしょうか。また、その場に集まる人が多様であればあるほど、それらをアイデアを実現するリソースも多いのではないでしょうか。

こうした検討会という集まりは非効率的で、統計学やキャリア診断サービスの今後の高度な発展によって、ワンクリックで検討できた方がよいという考えもあるかもしれません。しかし私の個人的な見解としては、そうしたサービスは確かに便利で快適かもしれませんが、まさにその利便性ゆえに私たちの「社会」はますます分断され孤独と孤立が深まるように思います。誰かの幸せを多様な人びとがともに考えること。その面倒さや非効率生を最小化できる場や仕組み。それらが実現される世の中の方が、私としては遥かに相互扶助的な「社会」として存立しているように思えます。

◆検討会についての参加者のコメント
最後に、ディスカッションの終盤で参加者の方々から、検討会についてのコメントを共有していただいたので、ここに一部記載させていただきます(メモした内容を元に、部分的に再構築しています)。

・「障害」というものを改めて考えるきっかけになった。
・今回みんで話し合ったAさんという人の事を、初めて会った人達と真剣に話し合うこと事自体に感動した。
・弁護士として仕事をしているが、様々な視点や考えに触れることができ、自分自身の幅も大きくなったと思う。
・参加者の人達が多様で、短い時間だったにもかかわらず色んな視点が見について良かった。
・CYWの関わりとして、その人の人生そのものに関わっていく大切さがわかった。
・すぐに、直接的に解決につながらないかもしれないが、意見を話し合い、今後を決めていく良い機会だった。
・こういう事例検討会は初めてだったが刺激になり、勉強になった。
・自分は精神保健福祉士として仕事をしているが、普段とは違い様々な視点があり、意見も聞けて、こういった一つ一つの動きが、社会を良くしていくのだと思った。
・CYWとして活動していくためには、色々な知識があると良いとわかり、少しずつ勉強していきたいと思った。

お忙しい中に長時間参加してくださった皆様、本当にありがとうございました!