コミュニティユースワーカー活動報告

NPO法人PIECESが運営するコミュニティーユースワーカーの活動報告ブログ

「人の育成」という子どもの貧困の新しいアプローチ

私たちはこれまで主に貧困や虐待など様々な課題を抱える子ども・若者の支援を行ってきました。
これまでは主に子どもの貧困といったテーマで中学3年生に関わり、彼らの高校受験の面倒を見てきました。
学力に遅れがあっても彼らと丁寧に関わることで高校進学を果たす子が多く生まれました。
 
◆なぜコミュニティユースワーカーという「人」を育てるのか
しかし、高校に入れば良いというわけではありません。
高校に入っても学校になじめない、学力がついていかない、中退した、子どもができたと様々な出来事が起こります。多くの支援が中3の時という「点」で関わるのですが、私たちは一度関わった子とはずっと継続的に関わりたいと思い、高校に入っても彼らと関わりを続けました。
 
高校に入ると、これまでサポートしてきた地域の目が届かなくなることが多いです。学区が変わり、アルバイトを始め、彼らは地域の人の目につかなくなってきます。親からのサポートを受けられない子もいます。さまざまな進路をたどっている子ども・若者の抱える課題は、年を追うごとにさらに複雑化し、一つのアプローチでは立ちいかなくなることが多いです。
その子達に誰が、どのように関わるのでしょうか。それこそ「点」で関わるのではない方法で、子ども達に継続的に関わったり、さまざまな課題に対応できる仕組みはないのでしょうか。
 
そんな思いから、私たちはこうした子ども達を支援するために、コミュニティユースワーカーという名前で、人材育成を始めることにしました。
特定の課題を解決する場をたくさん作るよりも、様々な課題に柔軟に対応出来る「人」が、関わる中で見えてくる困りごとに対応したり、必要な資源を繋げたりできることも必要なのではないか。そう思って、私たちは「人」の育成を始めたのです。
 
 
◆人のネットワークによる包摂
一人一人、やりたいことや、フィットする場所は異なりますよね。
先に述べたように、一人一人対応するためには、いろいろな枠組みにとらわれず、柔軟に対応していかなければなりません。
たとえば、一人の男の子は人は、学習支援で勉強することや人と話すことに前向きになり、プログラマーになりたいと話しました。
そこで私たちは、知り合いからエンジニアを探し、彼にプログラミングを教える機会を作りました。企業の方々にも協力してもらい、彼は今アプリを作ろうと奮闘しています。そして大学に行きたいと話すようになりました。近くでプログラミングをやってる様子をみて、僕も実はプログラミングをずっとやりたかったと話し、今ではエンジニアになってグーグルに入る!と意気込んでいる子もいます。その他には、音楽をやりたい子がバンドチームを作り、ファッションが好きな子はモデルやDJと一緒にファッションショーを開催することもありました。こうした活動を続けていくうちに、学習支援には行きたくないが、こうした場であれば言ってもいいという子達に出会うこともありました。
 
このように、私たちは、信頼関係を構築し、子どもたちの興味関心を引き出し、その子に合わせた支援の形や、社会との 関わり、新しい人との出会いを作っていきます。また、それらの個別的かつ多様な関わりは独立しているわけではなく、それぞれが繋がっています。それぞれが繋がっていくことで、子ども達に選択肢が生まれます。このように、それぞれの子たちが、それぞれに多様な大人・多様な世界とつながり、とりこぼされる子がいなくなるような「包摂」を目指しています。
 
◆コミュニティユースワーカーという「ハブ」
そんな人のネットワークによる包摂の中心となるのが、コミュニティユースワーカーだと考えています。
コミュニティユースワーカーはこうした子ども達と社会をつなげるハブの存在を目指していきます。
ハブとなるCYWを中心に、人と人とをつなげていくことで、子ども達をサポートするネットワークができます。このネットワークこそ、様々な課題を抱える子ども達の様々な課題を柔軟にサポートしていく仕組み=セーフティネットになります。
学校に行けなくても繋がった「人」を通じて、学習機会にアクセスできたり、親のサポートが得られない子でも、また10代のシングルマザーも子育ての面でも進路や就職の面でもサポートできます。
 
私たちは制度や組織、場といった支援の周りに、人のネットワークを巡らせることによって、より包括的かつ柔軟に子ども達をサポートしていきたいと思っています。
コミュニティユースワーカー1期生がスタートして早2ヶ月、様々な団体、組織と連携して活動がスタートしています。コミュニティユースワーカーのこれからの動きをこれからブログなどで発信していこうと思います。
 
NPO法人PIECES
コミュニティユースワーカー育成プログラム責任者
荒井佑介