コミュニティユースワーカー活動報告

NPO法人PIECESが運営するコミュニティーユースワーカーの活動報告ブログ

CYW紹介:糸賀貴優

初めまして、CYW 2期生の糸賀貴優(いとが きゆう)です。
現在は法学部に通う2年生です。

自己紹介として、興味・関心のある分野、CYWプログラムに参加したきっかけ、これからどのような活動をしていきたいか、の3点について書いていきます!

 

【興味・関心のある分野】

私が興味、関心を持っている分野は、大きく2つあります。
1つ目は、「乳児院や児童養護施設で生活している子どもたちに関する貧困」です。中でも、特別養子縁組、里親に最も関心があります。
2つ目は、「家族の多様性」についてです。この2つに関心を持つようになったきっかけは、私の生い立ちが関係しています。

私の母は、私の物心がつく前から離婚と再婚を経験しています。そして、2歳から10歳になるまでの8年間、私は本当の父親の存在を知らずに、実の母と養父の下で育てられてきたのです。そして、小学4年生にとっては衝撃的なカミングアウトをされ、ひどく動揺したのを覚えています。その日から、「私にとっての家族とは何か」について、よく考えるようになりました。この後も母の波乱万丈ストーリーはとどまることなく現在もなお更新され続けているのですが、長くなるので割愛させていただきます。

このように、複雑な家庭として育ってきた私ですが、その結果、「家族とは、血縁関係だけでなく、愛情や信頼関係によって人間関係が構築される」と断言できるようになりました。これをきっかけに、「様々な事情を理由に、生まれた家庭で育ててもらえない子ども」たちが幸せになるような支援について考えていきたいと思うようになりました。

 

【CYWプログラムに参加したきっかけ】

高校生の頃の私は、実際に子どもたちの支援をしていたり、危機意識を持って問題に取り組んでいる方々とお会いすることはできましたが、実際に子ども達の支援を行いたいと思っていても、どうやって取り組めばいいのか分からない状態でした。個人支援を行うにしても、私にはできるのだろうかという不安でなかなか支援に踏み出せずにいました。

そんな時に、PIECESのCYWというチーム編成、様々な専門家にアドバイスをもらえることができる環境を知り、すかさず応募しました。子ども達が何を望んでいるのかを考え、人とのつながりの場の提供や子ども達のやりたいイベントの企画をすることを通して、私でも子ども達に何かできるかもしれないと思いました。

 

【これから行いたい活動内容】

第1に、様々な子ども達と継続的なつながりを持っていきたいと思っています。ただ仲良くするのではなく、1つ1つの対話に意識を向け、それぞれに合わせた、人そのものへの眼差しを持って接していきたいです。知りたいこと、やりたいこと、解決したいことを共有したい、一緒に叶えたいと思ってもらえるようなCYWになれるように頑張ります。
第2に、自身の経験も含む、養子縁組、里親の当事者の気持ちを社会に届ける活動を行い、家族の多様性に温かい社会に近づけていきたいと思っています。

 

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CYW2期生

糸賀貴優

それぞれの強みやアイディアを活かして、さらにパワーアップ!?第3回ゲーム制作イベント開催!

ゲームクリエーターの方々とのゲーム制作イベント、第3回目を開催しました!

これまで、インベーダーゲームを作るチームと動物育成ゲームを作るチームに分かれて、ゲーム制作を進めてきました。

 

pieces-org.hatenablog.com

 


今回は、見学の方々含め大勢の人が集まったおかげで、たくさんの新しいアイデアが生まれました!
さて、今回はどこまで進んだのでしょうか?


***

 

プロの方の掛け声で、参加するこどもたちがチームごとに席につくと、前回までの振り返りが始まりました。

動物育成チームは、前回までに、画面に出てきた犬を連れていくかどうかを選択できるようになりました。
今日は、選択した後の動きを作る予定です。
まず初めに、今後ゲームで使う予定の画像を紹介しました。
なかでも、表情が違う二種類の犬の画像が、とてもかわいらしく、観客からとても好評でした!
実はこれ、小学生の姉妹2人の共同作業でできあがったもの。
手書きで描いた絵を、パソコンに取り込んでトリミングしたんです!
これを聞いて、インベーダーチームから、トリミングはおれらの十八番だったのに!との声が上がり会場全体が笑いに包まれます。

 

一方のインベーダーチーム。
主人公の女子高生から、敵に向かって、注射器が発射されるようになりました。
背景も細かな箇所まで描き込まれていて、戦闘シーンの雰囲気が出ています!
このあとどうするの?とプロの方から聞かれるも、その後の構想はまだ固まりきっていない様子。
再び迷走してしまうかも・・・大丈夫でしょうか?!

 

また、今回から初めて参加する人がいたので、新しいチームを作ることにしました!
少人数のチームになってしまいますが、そのかわりに、プロの方をひとりじめできそうです。
本日一番クオリティが高いゲームができるのでは?!と周りの期待も高まります!

前回の成果を共有し終わると、それぞれのチームに分かれて、作業を進めることになりました。

 

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***

 

チームに分かれてまず初めに行ったのは、今日の計画を立てることです!

順調な動物育成チームは、前回と同じペースで作業を進めることにしました。
高校生の男の子が、犬を連れていくか選択した後の動きをプログラミングで実現していき、小学生の姉妹が、今後のゲームの構成を練っていきます。
すぐに計画が立てられたので、スムーズにそれぞれの作業に移ることができました。

 

一方のインベーダーチームは、今後のゲームの展開について、アイディア出しをすることから始めることにしました。

「hpゲージがほしい!」
「ステージ制にしたい!」
「敵を動かしたい!」
(このままだと無抵抗な市民を殺してるだけで、むしろ主人公がインベーダーになってしまいます・・・!)

やりたいことが次から次へとホワイトボードに書き込まれます。
ついに、「最終的には対戦形式にしたい!」というアイディアまで!
このペースで進めたら2年後かな?とメンバー同士で話していましたが、プロの方は、そんなことないよ!できるって!と励ましてくださりました。
その励ましに力を得て、じゃあ4ヶ月後に対戦形式にします!と宣言。
ようやく目標が決まったところで、敵や味方の動きをプログラミングで変更する人、絵を描く人、ゲームの全体構成を検討する人、に分かれて作業を進めることにしました。

 

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***

 

最初に決めた計画や役割分担にもとづいて、それぞれのメンバーが作業を進めていきます。

動物育成チームでは、小学生姉妹のお姉ちゃんが、自分が遊んでいるゲームも参考にしながら、今後やりたいことをたくさん考えてきてくれました!

犬を家に連れて帰った後はどうするんでしょうか?

犬をなでる
犬をなでると満足度が上がる
満足度を上げるとお金がもらえる
お金がもらえると新しい犬が飼える etc

一生懸命に、そしてとても楽しそうに、やりたいことをプロの方に伝えてくれます。
時には、プロの方から、お金もらうために犬をなでるの?と鋭い質問を投げかけられます。
でもこれも、様々なアイディアを引き出そうとしてくれるプロの方の配慮です。
お姉ちゃんは少し考えた後、なでるとゲージがあがるようにしたい、ゲージがあがるとレベルが上がってボーナスが貯まるようにしたい、と新しいアイディアを出してくれました。
お姉ちゃんのアイディアで、ゲーム全体の構想がどんどん固まっていきます。

 

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インベーダーチームは、ストーリーの全体像を再検討した結果、前回作ったゲームをひとつめのステージとして位置付けることにしました。
病院にたどり着くまでの前置きや、操作方法の説明も入れて、より本格的なゲームのストーリーにしていきます。
ストーリーが決まってきたところで、絵の得意な男の子が、ストーリーにあった背景を描いていくことになりました。

ここで、ゲーム制作イベントに遊びに来てくれた人を助っ人として登場させよう!というアイディアが飛び出します笑
ピンチの時に1回だけ発動させられるようです。
入れていいですか!と、全体構成を考えている男の子に聞くと、んーいいよ!と快く許可してくれました!

早速、イベントに遊びに来てくれた武道をされている方にお願いして、蹴りのポーズや戦いの構えを見せてもらいます。
ムービーや写真でイメージをつかみ、人の絵を描くのが得意な男の子が助っ人キャラクターを描いていきます。

 

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あまりの上手さに、チームメンバーが他のひとに自慢してまわってしまうくらい笑
描いた絵は別のメンバーが加工して、なかなか倒せなさそうな強力助っ人が完成しました!

 

新メンバーのいるチームは、音ゲーを作ることになりました。

プロの方と二人三脚で進められただけでなく、アイデアを出したり作業を覚えたりするスピードが速かったため、あっという間にゲームらしいゲームができてきました。
その完成度には目を見張るほど。
後は音楽をつければ完成かと思いきや、どんどん改良のアイディアが湧いてくるようです。
完成型を見るのが今から楽しみです!

 

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***


最後に、レビューの時間をとり、他のチームに今日の成果を共有しました。

新メンバーチームは、音ゲーを披露。
ランダムに上から落ちてくる白いシャボン玉を、画面の下のバーを操作することで受け止めます。
タイミング良くシャボン玉がバーに当たると、シャボン玉が破裂!
これを見た他のチームメンバーから、ゲームじゃん!!!と驚きの声が。笑
途中から、プロの方も本気になって、落ちてくるスピード上げよう!などとどんどん難易度が上がっていったようです。
次回は、シャボン玉が割れたときに音をつけたい!とのこと。
今後の進展が楽しみですね!

 

続いてインベーダーチーム。
前回作ったゲームを、ステージ1とし、そこにたどり着くまでのストーリーを決めました。
まるで映画のようなストーリー展開に、観客がどよめきます。
これからどんなストーリーでゲームが進んでいくのか、目が離せません!
一方で、プログラミングを担当した高校生からは、データ移行がうまくいかず、プログラムを作り直さなければいけなかったとの報告がありました・・・
しかし、トラブルに負けることなく改良し、ボタンを押した数だけ注射器が飛ぶようになっていました!
今は、注射器が当たった後に、敵が爆発したまま残ってしまっているので、今後、敵が爆発した後に消えるようにしたいとのこと。

 

最後は動物育成チーム。
犬を連れて帰りますか?の画面から、yesを押すと犬を家に連れて帰り、noを押すと最初の画面に戻れるようになりました。
yesを押した後に、犬がフェードアウトしていく様子がスクリーンに映し出されると、会場が感嘆の声に包まれました。

おれらもステージが変わるときにフェードアウトしていくようにしようぜ!と、インベーダーチーム。
良いインスピレーションが沸いたようです。
今後は、犬を連れて帰った後のゲームを作り込んでいきます。

 

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今回の活動を通じて、すでに作ってあったゲームの場面から、全体的なゲームの構想を練り直すことで、今後の進むべき方向性を明確にすることができました!
また、それぞれが得意な分野で、自分の力を発揮して、ひとつのゲームを作り上げることに貢献していました。
誰かがやっていたどんな作業も、自分たちのゲームを作るためには必要なこと。
この経験を大切にしていってほしいです!

次回は、3月に開催します!
それぞれのゲームがどんな風にグレードアップするのか、次回の報告もお楽しみに!

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<ご寄付のお願い>

PIECESでは現在、日々の活動を下支えしてくださる『寄付サポーター』を募っています。
「活動にはなかなか参加できないが、継続的な寄付で間接的にサポートしたい」、「様々な環境の中を生き抜く子どもたちの、豊かな環境づくりに貢献したい」。
そのような方々からの活動資金のご寄付や物品の寄贈が、希望や願いとなって子どもたちの“いま”と“未来”を作っていきます。
私たちの、そして子どもたちのサポーターとなっていただけることを、心からお待ちしています。

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コミュニティユースワーカーが紡ぐ関係性、名はまだない

ATLASプログラムでお世話になっているsmartnewsの望月さんがPIECESの記事を書いてくださいました!
コミュニティユースワーカーが子どもたちと紡いでいく「関係性」について、「家族を捉えなおす」ことを媒介にしながら書いていただきました。ハンナ・アレント、映画『さとにきたらええやん』『永い言い訳』、ラッパーA$AP Rockyも引きながら書かれていて、とてもおもしろいです!
こんな素敵な記事は望月さんしか書けない!本当に嬉しい記事です。
昨年「逃げ恥」も大流行したことからも伺えるように、「家族を捉えなおす」ことは、多くの人の関心事なのだと思います。
ぜひぜひ、CYWの理解をふかめて頂くためにも読んで下さい〜!!
 
はてなブックマークにもいろいろ反響いただいて面白いです。!
 
 
※以下は、この記事を読んだ後に読んでください!
 
「親密圏の構築」することに、他者が介在することの積極的な意味について
 
望月さんの記事は、家族以外の「他人」が「親密圏」の担い手として存在している必要がある、つまり「家族でなくても、他人でも、できることがある」ということを丁寧に描いてくださっています。
それに加えて、もう一歩それを拡張させると「他人であるからこそ、できたことがる」とも思います。
 
簡単にいうと、「他人」も家族のような関わり(親密圏)をつくる一部になれるし、家族は他人を頼ってもいい。そしてその他人と親密圏をつくるからこそ、家族と「違う世界」を見せられるということです。
 
望月さんの記事から続けて映画『永い言い訳』を引用させてください。(詳しくは省きます)
母親を失った男の子の父親は、トラックの運転手であり、一方のもっくん演じる主人公の男は小説家であり、それぞれの職業がもつ文化(価値観)というものは異なるものです。中学受験の勉強を頑張りたい小6の男の子にとって、小説家の人と関わることができるというのは、新しい文化に通じる入り口でもあったかもしれません。そういった家族じゃない「他人」と関係を作っていったことによって、家族の外にある社会の風を少しばかり感じたのではないかと思うのです。(これはあくまで私の見解ですが)
 
これは、「他人」である主人公が、小6の男の子にとっての「親密圏」の担い手になることで、アレントのいう「世界」になっていた可能性があるということを示唆していると思います。
※アレントは、「世界」を、(地球とか自然とかそういったものではなく)「人間の工作物や人間の手が作った製作物に結びついており、さらに、この人工的な世界に共生している人びととの間で進行する事象に結びついている」ものとして定義しています。人と人とを結びつけたり分離させたりする仲介者でもあります。
 
世界の議論を拡げているときりがなさそうなので、いったん簡単に噛み砕くと、
PIECESのつくろうとしているコミュニティユースワーカーは、「その人がその人でいられる親密圏の一部となることで、そこを足がかりとしてその外の社会(ここでは一般的な意味での)と繋がる仲介者」にもなれる存在であると思うのです。
家族でもない「他人」がその子の存在を「その子」として受け止める。そうした関係を通じて、子どもは「他人」の背中に広がっている家族と少し違う景色を感じる。そのような機能は、家族よりも「他人」だからこそ担うことができると思うのです。

そういったまだ名前はない関係性を紡いでいくため、コミュニティユースワーカー事業はこれからも名前を見つけていけるように頑張っていこうと思います!よろしくお願いいたします!


PIECESスタッフ 青木

失敗からゲーム作りの奥深さをを学ぶ!第2回プロゲームクリエイターとのゲーム制作イベント!

ゲームクリエイターの方達と第2回目のゲーム制作イベント!

前回のブログはこちら。

「ゲームをつくってみたい」その思いに応えてゲームクリエイターとゲーム制作イベント開催! - コミュニティユースワーカー活動報告

 

前回は、ゲーム制作に必要な3つの役割を教えてもらい、2チームに分かれて、インベーダーゲームと動物育成ゲームを作るチームに分かれてそれぞれ作業しました。

ゲームの全体構成を決め、キャラクターの絵を描き、その絵をプログラムで動かすところまで進みました。
 
さて、今回はどこまで進んだでしょうか!
 
前回のイベントがとてもよかったのか、ほとんどの子が変わらず参加してくれました!(いつもイベントはドタキャンなどする子が多い中これは奇跡です!)
 
数人今回が初参加の人もいたので、まずは前回の振り返りから。
次に、宿題の成果を発表!
 
インベーダーチームは気合を入れて自主勉を何回か行っていました。
が、しかし前回決めたゲームの構成から大きく外れて作りたいものを作ってきたという状態でした笑
インベーダーチームはとりあえず、軌道修正から始まりました笑
 

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動物育成チームは、なかなか集まりなどができなかったので、宿題は進展なし。
 
この日は、説明の時間はほとんどなく、それぞれのチームに分かれて、開発の時間を多くとりました。
わからないことや作ってみたいことがあれば、すぐにプロに聞くようなスタイルで進めていきました。
 
インベーダーチームは、軌道修正から。
とりあえず、「おれら何作るんだっけ?」というところから確認。前回アイデアを出したポストイットを見ながら振り返り。
プロの方から「このチームは、ミスするタイプのチームだな〜笑」と言われ、高校生たちは「いや、おれら絶対ミスしないし!」と対抗。
その勢いで、前回の振り返りから、この日のタスクを洗い出すことに。
挙げたタスクは以下のとおり。
①ストーリー
②キャラクターを出す
③ステージ作り
④衣装作り
⑤敵キャラ作り
⑥BGM
⑦武器を3Dにする
それぞれのタスクの担当を決め、作業に取り掛かろうとしました。
そこで、プロの方からツッコミが。
 
「このチームは盛り込みすぎ笑 まずこのゲームの一番面白い部分はどこ?そこを中心にまず作っていったらいいと思うよ」と言われ、優先順位をつけることにしました。
私たちは、主人公が武器で敵を倒していくゲームを作るんだと立ち返り、キャラクター(主人公)を動かすこと、敵キャラを作ること、武器を作ることの3つに絞って担当を決め、作業をはじめました。
 
一方、順調な動物育成チーム。
チームメンバーは小学生の姉妹2人、高校生の男の子1人、CYWの3人でした。小学生の姉妹2人が主にゲームの設定のアイデアを考えてくれて、ゲームのイメージをチームメンバーみんなで固めていきました。そのイメージを元に、高校生の男の子がプログラミングでアイデアを形にする役目を担いました。
(この辺りのチーム感や計画性がインベーダーチームにはありませんでした笑)

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■小学生女子によるゲームストーリー作成とキャラクターデザイン

 小学生姉妹は、久しぶりに前回プログラミングをした仲間たちや新しい大人たちと話ができて、楽しく過ごしている様子でした。

 小学生姉妹のお姉ちゃんは前もって家でアイデアを考えてくれており、自分の考えたことをゲームの動きにより反映させたいという意思が伝わってきました。お姉ちゃんの頭の中でゲームの全体像がイメージできているということもあり、今回は全体像からより具体化する作業を行いました。

 具体化するために頭の中のイメージを文章やイラストに落としていく作業は地道で大変そうでしたが、これが今後、製作中のゲームの中で実際に反映されるようになると、よりやりがいも感じられるようになって、物事に取り組む姿勢なども学んでいけるのではないかと思いました。

 

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■男子高校生のプログラミング

 高校生の男の子は前回作成したゲームの動きより発展させた動きをプログラミングできるよう挑戦しました。普段、プログラミング言語に触れている彼も、初めてのゲーム制作ということもあり、はじめから動きを実装することは難しそうな様子でした。

 そこで、最初にメンターを努めて下さっているゲーム制作会社の方が見本を見せてくれ、ひとつひとつプログラムの意味を教えてもらいました。実装する予定のプログラムを理解した上で、今度は実際に高校生自身で考えながらプログラミングをやってみました。前回のイベントではゲーム制作会社の方が動きのプログラミングの大部分を実装してくれたこともあって、今回が高校生自身でやる実質はじめてのプログラミングでした。

 お手本で見たプログラムを見よう見まねで打ち込んでいく高校生。実際に実装する際の動きはお手本の動きと微妙に違っていたので、この段階で、高校生も自分で考えながらプログラミング。途中まで終えた段階で、メンターの方から「いい線いってる!」とのことで、さらにプログラミングを進めていきました。

 その結果、予定していた動きの大部分をほぼ自力で実装することができました。高校生自身、前回に比べてかなり手と頭を動かしながらプログラミングができたので、「楽しかった」と笑顔で感想を述べていました。

 

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その頃、インベーダーチームは、
プログラムを書くチームと、書いたキャラクターの絵をパソコンに取り込み、トリミングをする作業に分かれていました。
 
まずは、キャラクターを上下左右自由に動かせるようにプログラムを書き、その後、武器を持って飛ばすプログラムを書きました。
 
キャラクターの絵は完成していたので、敵キャラの絵を描き、武器の種類も増やし、背景の画像も書くことにしました。
そうした作業を進めていくのと同時に、キャラクターの画像に余白が残っているので、輪郭通りにトリミングしたいという話になり、フォトショップを使って、トリミング作業を習いました。
まず、CYWの一人が、トリミングを習うと、それを高校生に伝授していきました。みんな自分が書いた絵を、順番順番でトリミングしていく。
最終的にはトリミングができる人間が5人に増え、トリミング業者のようになっていきました。
みんないい気になって、隣のチームに「なんならトリミング手伝ってあげようか?」と自慢げに言っていると、「それ下請け業者じゃん!」というツッコミが入り、一同爆笑。
 
そんな一幕もありながら、休憩タイム。
 
この日はまさかのケーキの差し入れが人数分あり、学年が下の子たちからケーキを選ぶ権限をもらって、みんなで仲良くケーキを食べました。
 

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ここまで作業を重ねたことで、みんなチーム感が出てきて、温かい空気が流れていました。
 
休憩後も開発を重ね、いよいよ終わりの時間が迫ってきました。
 
この成果発表を1チームずつ発表しました。
 
まずは、インベーダーチームの発表から。
インベーダーチームは、トリミングは完璧に仕上がってて、画像のデータがすっきりしていて、少しゲームっぽくなっていました。
キャラクターが上下左右自由に動き、キーを押すと、武器が発射されるものの、敵を貫通していく笑 というところまで作れました。
この後は、敵に当たったら敵が消え、効果音などをつけたいと話し発表終了。

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続いて、動物育成チーム。男子高校生がプログラミングしたゲームの動きを説明し、小学生姉妹のお姉ちゃんがゲームの設定や今後のストーリーについて発表してくれました。
キーが押されたら、犬を抱えるアクションが起こります。持っていく、持っていかないの選択肢が画面に表示されると会場からは「すげー」「やべー」と歓声が起こりました。
そして、この先には、こんなストーリーがあって〜とアイデア満載で今後何を作れば良いかまで明確でした。
 

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この発表を聞いたインベーダーチームは、「おれらやばいじゃん笑」と焦りはじめ、プロの方々のコメントでも
「このように、あれを作りたい、これを作りたいと各々がバラバラに作っているとゲームは成立しない。実際の仕事でもこうして作られたゲームが結局完成しないままボツになってしまったこともたくさんある。インベーダーチームは、失敗しない!と意気込んでいたけど、失敗してほしいなぁ〜笑と思って見てました笑」とアドバイスと実体験を話してくれました。
 
 
この話を聞いたインベーダーチームはなんとなくゲーム制作をどのように進めて行けば良いかわかりはじめたようで、終わった後すぐ軌道修正のミーティングを行いました。
「おれらこれ作ったら次何するんだ?」というところから始まり、隣のチームを見て、ゲームの構成が何も決まっていないことに気づきました。
このミーティングでは、「これを作れば何回でも遊べる面白いもの」を意識して、必要最低限のゲームの構成要素を考え、まずそこから作り込むことから始めました。
キャラクターの動き、敵の動き、武器の動きを決め、どのようにゲームが進んでいくかを整理し直しました。
そして、次第に余計な機能をつけそうになりながらも最低限やらなくては行けないことを絞れるようになり、次回までの宿題も決まりました。
この軌道修正ミーティングから、チーム感が出はじめたような気がしました。
 
失敗から学ぶことは多い。
 
インベーダーチームは勢いよく失敗をし、そこから軌道修正して、自分たちが何が足りていないのか、何をしたら良いのかを全員でアイデアを出し、しっかりと軌道修正することが出来ました。
動物育成チームをだいぶ差ができたように感じますが、これからのインベーダーチームの追い上げをお楽しみに!笑
 
 
今回は、動物育成チームの姉妹の止まらないアイデアがすごいとみんな注目していました。そのアイデアをベースに作業を分担し、チームとして機能している動物育成チーム。
なかでも、皆の前で発言することが苦手で第一回では発言しなかったお姉ちゃんが、今回はそこまで嫌がることなく発表することができました。まだ二回目の開催ではありますが、短期間でも子ども達の成長を見ることができました。

つながりのなかった子ども達が一緒にゲームを作ることですごく仲良くなっていく姿が印象的でした。

それそれチームの特徴も違ってて、これからの進展が楽しみです!「次回は楽しみにしとけ」と意気込んでいたインベーダーチームはどうなるのでしょうか!

 

次回はなんとクリスマスイブに開催!みんなイブは暇しているようです笑

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見えない「子どもの貧困」に立ち向かう。課題を抱えた子どもたちに支援を届けるために必要なこと

近年、児童虐待や餓死をして死亡してしまう子どものニュースが取り上げられることが増えてきている。

子どもの貧困や虐待は、深刻化してから「事件」として表に出てきてしまう。

 

しかし、そうした子どもや家庭が深刻になる前に、何かしらの支援につながり、改善していくことができないのだろうか。多くの支援者たちが、そうした子ども達を早期発見しようと日々活動に取り組んでいる。

 

私たちNPO法人PIECESでは、兄弟や友達のような立ち位置で子ども達と近い距離で、悩みや興味関心に寄り添う支援者を育成している。こうした支援者をコミュニティユースワーカーと名付けて育成している。

支援機関よりも身近なお兄さん、お姉さんを育成し、子ども達が抱えている課題が深刻かする前になんとか出会い、支援に繋げようとする取り組みである。

私たちは、子ども達にとって身近な存在であることから、子ども達のコミュニティに入っていくことができる。

ひとりの支援対象者と出会うことができれば、その子の周りにいる「友人」にリーチすることができる。

「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、対象となる子ども達の周りには、似たような課題を抱えている子が多い。

子ども達と仲良くなり、子ども達のコミュニティに入って、直接子ども達と繋がるこのアウトリーチ方法を「芋づる式アウトリーチ」と呼んでいる。

 

私たちは、こうしたアウトリーチの方法以外にも、様々な方法でアウトリーチをし、まだ支援につながっていない子ども達を見つけていきたいと考え、今回アウトリーチ研修を企画した。

 

講師は、インターネット広告などを通じて、ハイリスクの自殺者にアウトリーチをしている革新的な取り組みをしているNPO法人OVAの伊藤次郎さんをお招きした。

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ova-japan.org

 

伊藤次郎さんは、日本財団のソーシャルイノベーターにも選出されており、アウトリーチャーを数多く輩出していくことに力を入れていくそうだ。

アウトリーチの実践的な研修をこうして体系立ててお話しできるのは日本には伊藤次郎さんしかいない。

そんな伊藤次郎さんからアウトリーチの定義から具体的にアウトリーチをしていくために、アウトリーチのデザインまで研修していただいた。

私たちの業界では、アウトリーチという言葉は何気なく使っているが、いざ定義を聞かれると困ってしまうことが多い。

こうしたそもそもアウトリーチとは何か、をしっかり学ぶ機会となりました。

次郎さんはマーケティングの視点が必要で、私たちが届けたいものではなく、ユーザーの視点に立って考えることが大事だと話していた。

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座学の研修だけでなく、ワークショップも実施。

 

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「徹底的にユーザーの視点に立って考える」

私たちが支援を届けたい人たちが、日々どのような生活をしていて、朝どのように起き、何を食べ、どこにいき、どんな情報を目にしていて、どのように家に帰り、家に帰ってどのような生活をしているのか、

徹底的にユーザーの行動を洗い出すことを行なった。

なかなか支援につながらない人たちに、いかに支援を届けるか、彼らの日常にどのように支援を差し込んでいくのか、実際にシートに書き込んでいった。

 

私たちは、一方的にこうした支援をした方が良いと思い込んでしまうことが多い。

しかし、今回の研修を経て、本当にこのような方法で良いのだろうかと改めて考え直すくせがついたように感じる。支援を届けたい人たちの顔を浮かべながら、実際の生活を浮かべながら、どのように届けていくか、「ユーザー視点」がとにかく大事だと教わった。

 

こうした研修を経て、CYWの日々の態度が変わったように感じた。

子ども達の日常に目を配り、彼らがどのような日々を過ごしているのか、そうしたところまで目を配らせるようになったように感じている。

実際に、日々どのようにアウトリーチしていくかのディスカッションも行なわれている。

伊藤次郎さんの知恵を今後も借りながら、私たちもアウトリーチャーの輩出に少しでも貢献できたらと思った。

 

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「ゲームをつくってみたい」その思いに応えてゲームクリエイターとゲーム制作イベント開催!

ある一人の子が「プログラマーになりたい」と話していました。
パソコンは持っておらず、教えてくれる人もいない。
彼に関わっていたCYWが中心となり、これまでプログラミングを教えられる人を探し、教えてもらう機会を数多く作ってきました。映像制作、ゲーム制作、ロボット、パソコン組み立て・解体など様々な体験活動を実施してきたが、今回は彼の念願であるゲーム制作を体験できるイベントを実施することができました。
 
今回はあるゲームクリエイターの方々で構成される会社とコラボして、子ども達とプロが一緒になってゲームを作り、リリースを目指すという趣旨のイベントを実施し、プログラミングに関心のある小中高生が集まりました。
 
[ご協力いただいた会社]
株式会社SKYS 

skys.world

 

 

子ども達みんなが知っている某有名なゲーム開発に携わった方々が中心となり、ワークショップ形式で行いました。流れは以下の通り。
①自己紹介
②ゲーム作りに必要な3つの役割の説明
③アイデア出し
④アイデア投票
⑤グループ決め
⑥役割決め
⑦制作
⑧進捗発表
⑨次回の宿題、日程決め
 
今回は、ほとんどの子達がプログラミングは初心者でした。
スキルなどは関係なく、とにかく楽しく作りたいものを作ってみる。その過程で、必要な知識を周りのプロ達に教えてもらいながら、少しずつ形にしていくスタイルで進めました。
 
◆自己紹介
自己紹介はみんなシャイなので一言ずつ笑
プロの人たちが錚々たるメンバーで一同騒然。
 
◆ゲーム作りに必要な3つの役割の説明
ゲーム制作には、全体の構成を考える役割、キャラクターのデザインをする役割、そのキャラクターなどを動かすプログラムを書く役割があると教えてもらいました。
今回は、2グループに分かれ、プロと同じく、3つの役割に分かれて開発することになりました。
 
◆アイデア出し、投票
アイデア出しはみんなスラスラと作ってみたいゲームをあげられました。f:id:pieces-org:20161130211017j:plain
数多くのアイデアが出て来たのだが、今回は2つのアイデアに絞りました。
 
①インベーダー風のTPS(サードパーソンシューティング、三人称視点)ゲーム
②動物育成のゲーム
 
◆グループ決め、役割決め
それぞれ、好きなゲームに分かれて2チーム結成。
その2チームの中で、
全体の構成を考える子、キャラクターの絵を描く子、キャラクターを動かすコードを書く子に分かれて、それぞれが作業を行なっていきました。
 
◆制作
それぞれのチームに絵が得意な子がいたので、キャラクターのデザインが一番早く出来あがり、
①のゲームは主人公が、入院している女子高生というキャラクター設定で、武器がカミソリや注射といったなかなか面白い世界観のゲームになりました!
②は小学生の女の子達が可愛らしい動物を描いてくれました!f:id:pieces-org:20161130211047j:plain
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プログラムを書くチームが大変で、一つ一つの動作を作るだけでも、結構時間がかかる。
日々、自分たちがやっているゲームがいかに制作が大変かをみんな感じたようでした。
みんなはじめてコードを書き、よく分からないながらも、一生懸命入力したのが印象的でした。
プログラムを書き、再生ボタンをおすがエラーが出てしまう。原因を一緒に考え、エラーを取り除き、、キャラクターが動いた瞬間歓声が!

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◆進捗発表
それぞれ2チームの進捗を発表!
4時間があっという間に過ぎ、この日の成果をそれぞれのチームが発表。
ゲームのコンセプトやキャラクターの特徴、どのように動かしたかを発表し、それぞれの作ったものに拍手を送り合いました。
 
◆宿題、次回の日程決め
それぞれの役割で各自作業を進めることに。
プログラムを書くチームは、自主勉の会を開くことに!
そして、1ヶ月後また集まることが決まりました。
 
◆感想
「自分たちが作ったものが動いた瞬間がとても楽しい」子ども達はこんな感想を話していました。
初回はゲーム作りの奥深さを感じ、ちょっと道のりが遠く感じたが笑、少しずつ形にしてチームで作り上げることにみんな楽しみを見出しているようでした。
 
みんなでアイデアを出し合い、一緒に開発することが何より楽しかったです。
子ども達の中には、自分で考えたものをひたすら自分で作りたいと思う子もいました。
いずれ、チームを切り分け、それぞれが作りたいものをつくるように発展していっても面白いだろうなと思います。
 
とにかく、日々やっているゲームの裏側にはこうした膨大な作業とエンジニア達がいることを知ることができました。
プロはすごい。
子ども達のやる気は続くのか!宿題の成果はいかに!
次回の集まりもまたレポートします!

 

立場を越えて、誰かの人生にとっての幸福を真摯に考え抜く「検討会」

◆目次

1)はじめに

2)検討会の背景
3)参加者の多様性
4)検討会の在り方
5)検討会についての参加者のコメント

◆はじめに
コミュニティ・ユースワーカー(以後、CYW)1期生の坂牛です。
10月22日の2期生募集説明会の後に、子ども・若者との関わりについて、多様な参加者によって構成される事例検討会を開きました。当初企画した内容を乗り越えていく形で素晴らしい会となりました!また、結果的に「PIECESらしさ」が色濃く映る会にもなりました。今日はこの検討会についてご報告させていただきます。

なお、今回検討した内容の「その後」については、3か月後ごろに再度に検討会を実施するか、座談会を開くかなどして、何かしらのアクションを継続的に起こす予定です。また、今回の「検討会」は新たな発見に溢れたものだったので、固有の名前も考えていきます(参考のため、名前を募集させてください!)。

◆検討会の背景
検討会を開くきっかけは、私自身がCYWとして子ども・若者たちと関わっていく中で、様々な葛藤や迷いに直面したため、外部から専門家をお呼びして事例検討を行いたいと思ったことです。「関わっている相手にとっての幸せとは何だろうか」「どのような関わり方がよいのだろうか」「CYWだからこそ担える役割はなんだろうか」という3つの大テーマを掲げ、1人についての詳細な事例検討を3時間にわたって行いました。検討会を通して、CYWや専門家の視点の特徴、寄り添いの在り方について、深く学ぶことができました。

◆参加者の多様性
特筆すべきは参加者の多様さです。CYWはもちろん、企業に勤めている方や弁護士、精神保健福祉士、大学の学部生、就労支援経験のある方など、様々な属性のある方々にお集まりいただきました。加えて、PIECESからは児童精神科医である代表の小澤さんを初めとして、ソーシャルワーカーである斎さん、大学院生でPIECESのプログラムを設計している青木さんたちも、議論に加わってくださいました。

◆検討会の在り方
検討した内容はここに報告することはできませんが、「検討会の在り方」それ自体について、私の感じたことを2点述べさせていただきます。

a)誰もが参加できる「コミュニティ」の創発

検討会では、本人にとっての幸せとは何かや寄り添いの在り方について、立場にかかわらず意見を交わすことができました。

私がとても興味深く感じたのは、専門的な支援職についている参加者たちが、「専門的な視点以外からの意見が参考になった。自分の仕事においても学びとなった」と述べていたことです。

もちろん、専門的視点があるからこそ、現状に対する適切なアセスメントやリスク評価が可能になり、ひいては適切な支援が可能になります。しかしその視点では逆に、特に医療の現場においては、リソースに限りのある状況の中で相手を捉えることで、最低限の処置案しか提示されなかったり本人が活用できるリソース自体を増やすアイデアが出てこなかったりするようです。

この度の検討会には、複数の専門領域どころか、専門的な知識やスキルを持っていない参加者もいました。印象的だったのは、誰かの幸せを検討する上で、参加者一人一人の持つ強みと資源が活かされていた会だったことです。

問題や困難に対応することについて、多くの人に、専門的な知識やスキルがないいけないんじゃないか、という感覚があるように思えます。社会問題に関心はあっても、具体的な行動をするまでに思い切れない人がたくさんいると思います。でも、誰かの幸せを願うときに、専門的な視点が役立つことはあれど、出来るだけ多様な視点からの意見が共有された方が新しい気づきと発想に出会えるのではないでしょうか。

現代では課題を解決するにあたって、専門家と「素人」が分化され、専門家内でも様々な領域へと分化されるという、「無力化と分断」の状況があります。それに対して本検討会では、専門家と素人同士が分かたれるのではない、多様な属性を持つ市民としての人びと同士が知恵を持ち寄り合ってつながる「コミュニティ」ーーそんな雰囲気を抱きました。

b)誰かの幸福をともに考える場

複数の参加者から、「一人のことについて、こんなにも濃密に考えて話し合いをすること自体がすごい。自分自身が検討されたい!」という発言がありました。考えてみれば、このような検討会は何も障害を持つ人のサポートに限らず、ありとあらゆる人の幸せを願う場において重要なのではないかと考えています。

例えば、自分自身の人生のことを意思決定するとき、あるいは困難に直面したり悩みを抱えていたりする時、あなたは誰に相談しますか?進路決定などは、家族や学校の先生、複数の友人にしか相談しないことが多いのではないのでしょうか。もしかしたら、ほとんど相談せずに決めてきた、解決してきたという場合もあるかもしれません。

もちろん、意思決定しようとする度に本格的な事例検討会をいつも開く必要は無いと思います。しかし、考えても悩んでも迷いが残る時には、一部の関係者(先生、親)や、類似性や共通点のある者(友人など)にだけ相談するのではなく、複数の、なおかつ多様な者同士で考える方が、いままで思いつかなかった気づきや発想に至るのではないでしょうか。また、その場に集まる人が多様であればあるほど、それらをアイデアを実現するリソースも多いのではないでしょうか。

こうした検討会という集まりは非効率的で、統計学やキャリア診断サービスの今後の高度な発展によって、ワンクリックで検討できた方がよいという考えもあるかもしれません。しかし私の個人的な見解としては、そうしたサービスは確かに便利で快適かもしれませんが、まさにその利便性ゆえに私たちの「社会」はますます分断され孤独と孤立が深まるように思います。誰かの幸せを多様な人びとがともに考えること。その面倒さや非効率生を最小化できる場や仕組み。それらが実現される世の中の方が、私としては遥かに相互扶助的な「社会」として存立しているように思えます。

◆検討会についての参加者のコメント
最後に、ディスカッションの終盤で参加者の方々から、検討会についてのコメントを共有していただいたので、ここに一部記載させていただきます(メモした内容を元に、部分的に再構築しています)。

・「障害」というものを改めて考えるきっかけになった。
・今回みんで話し合ったAさんという人の事を、初めて会った人達と真剣に話し合うこと事自体に感動した。
・弁護士として仕事をしているが、様々な視点や考えに触れることができ、自分自身の幅も大きくなったと思う。
・参加者の人達が多様で、短い時間だったにもかかわらず色んな視点が見について良かった。
・CYWの関わりとして、その人の人生そのものに関わっていく大切さがわかった。
・すぐに、直接的に解決につながらないかもしれないが、意見を話し合い、今後を決めていく良い機会だった。
・こういう事例検討会は初めてだったが刺激になり、勉強になった。
・自分は精神保健福祉士として仕事をしているが、普段とは違い様々な視点があり、意見も聞けて、こういった一つ一つの動きが、社会を良くしていくのだと思った。
・CYWとして活動していくためには、色々な知識があると良いとわかり、少しずつ勉強していきたいと思った。

お忙しい中に長時間参加してくださった皆様、本当にありがとうございました!