コミュニティユースワーカー活動報告

NPO法人PIECESが運営するコミュニティーユースワーカーの活動報告ブログ

CYW自己紹介: 北山雄大

はじめまして、CYW1期の北山雄大と申します。
現在は大学3年生で英文科を専攻しています。

以下の文で①CYWプログラム参加のきっかけ、②CYWプログラムに参加しての感想、③これからどのような活動をしていきたいか、について記述させていただきたいと思います。


【①CYWプログラム参加のきっかけ】
大学2年生の頃からあるNPOで1年間ボランティアをさせてもらっていたのですが、そこでは自分の子どもたちとの関わりに限界を感じ、もっと他にやれることや自分がより成長できる場所があるのではないかと考えてそこを抜けて一ヶ月間探していた時にPIECESにであいました。
これまでのボランティアとは全く違う形で違う子たちが集まっていて自分が何か新しいものや価値を知るために飛び込んでみようと思ったのが最初のきっかけでした。

 

【②CYWプログラムに参加しての感想】
最初はまったく右も左も分からない状態でした。そんな中で衝撃的だったのは自分これまで話してきた子どもたちとはまた違う感覚になったことでした。自分から話しかけてもあれ?と思うことばかりでなかなか彼らと会話が長く話したりすることなくさらっと表面上で終わってしまうことがとても多かったです。
その後自分を知ってもらう機会や自分がその子たちとかかるように連れて仲良くなっていった印象が強いです。
仲良くなれるということと同時にこの子たちの可能性をもっともっと引き出せていけたらいいなと感じています。普段物静かな子でも好きなことに対して持っている情熱や知識は本当に強く尊敬できるほどです。その分彼ら彼女らから学ぶことがたくさんあり毎回毎回楽しく活動出来ています。
かかわっていく中で自分の強い部分や弱い部分もたくさん見えてきたのですが、
その関係性の中で何が自分にできるのか?という疑問はありますが彼らがやりたいことや一緒に話しながら何かをしていくことを大事にしながらやっていきたいと思います。

 

【③これからどのようなことをしていきたいか】
自分にできる事を一つずつやっていきたいとは考えてとは思っているのですが
具体的には
①まず対話から自分を知ってもらった上で関係性の構築・強いものにする
②子どもがやりたいことややりたいに対して一緒にアクションを起こし、共に伴走する
③イベント、プロジェクト等などを一緒に走り切る

まずはこの三つを目標にしながら自分に何が出来るのか?何をしていきたいのかを明確にしていきながら振り返った時にきちんと納得のできる活動を作り上げていきたいと思います。

 

CYW1期

北山雄大

 

「人に頼れない」「死にたい」と感じる女子高生のための居場所作りプロジェクト

CYW1期生の安森正実です。
 私は、居場所がないと感じる高校生のための居場所を作っていきたいと考えております。 
 
◆きっかけ 
そう思うようになったきっかけは、2つあります。1つは私が高校生のころ、父や母、友達などに、心から頼れる人がいなかったこと、もう一つは、困ったときに駆け込めるところがないと命を落としてしまう危険性がある、と感じたからです。それに加え、高校生の自殺率は、中学生の自殺率より多いということも理由の1つとして挙げられます。 
 
 
◆私は当時、「頼りたい」けど「頼れない」状況が続いていました。私はそのような状況に居続けたためか、「人に頼る」という行為が難しくなっていきました。そのような状況は、本当に助けが必要な時に自分から手を差し伸べることができなくなり命を落としてしまうことにもつながりかねないのです。「今抱えている問題を解決したい」「話して楽になりたい」「自分には居場所がない」「死にたい」そのような気持ちを持っている子たちは私の周りにもいました。そのような時に「一緒に考えていこう」と言ってくれる人がいることで「もう少し頑張ってみよう」と感じたり、話すことで気持ちが楽になり「もう少し生きてみよう」と思えたりするきっかけとなるかもしれないのです。 
 
 
◆私はその子たちのあらゆる可能性を信じて、「頼りたい」と思った時にいつでも頼ろうと思えるような関係性を築き、またひとの温かみを感じられる場所を作りたいと考えます。また突発的に「死」を選択してしまう危険性を防ぐ為にも、いつでも駆け込めるような場所を作りたいのです。 
そのためにも、そこの場所にはお馴染みの人がいて、その人たちと一緒にご飯を食べたりスポーツをしたり、テレビを見たりする。それに加え、定期的に一人ひとりと向き合って話す場を設けることで人の温かみを近くで感じられ、その子たちと継続的に関わっていくことで、その子達が「いつでも頼れる人はいるのだ。自分には居場所があるのだ。」と思えるような関係性を築いていくことを目標にしていきたいと考えます。 
 
 
◆しかしこの居場所を作っていく上で、根本的な問題があります。それはどのようにして居場所のない高校生を探していくかということです。拠点となる場所を確保できたとしても、居場所を必要としている子を見つけることが出来なければ活動をしていくことができないからです。 
そこで、私は伊藤次郎さんにお会いしてきました。伊藤さんは、リスティング広告を使い、生きることが辛いと思っている人をキャッチし、メールで相談を行うなどして自殺予防に取り組んでいる方です。

ova-japan.org

 
 
◆伊藤さんから私は、居場所を必要としている子たちが普段どのような生活をしているのか、そのような子達は横浜で何人くらいいるのか、「自分がされてうれしい支援は何か」という視点で考えるのではなく「居場所を求めている子たちがどのようなことを必要としているのか」ということを具体的に考えていくことが、どのようなシステムが良いかを考える上で、またアウトリーチする上で必要なことであると学びました。 
そしてどのようにアウトリーチをしていくかという議題の中で、学校と連携していきたいという考えから、学校の中でも保健室と連携していくのかどうかなどをより具体的に考えることが大切だということや、同じような活動をしている団体はいるのかを把握することは連携できる範囲を広げていくことにつながるといったようなアドバイスもいただきました。 
 
 
◆ 今後はこのプロジェクトの必要性を今以上に言語化してより多くの人に伝えていき、同じような活動をしている団体と多く関わりながら連携できる範囲を広げていきたいと考えております。具体的に言語化していくことは難しいことではありますが、「居場所がないと感じる高校生のための居場所を作っていく」という目標に向かい、日々努力していきます。
 
CYW1期生
安森正実

高校生VJユニットデビュー

高校生VJユニットデビュー

 
PIECESでは現在、子ども達のニーズの多いプログラミングを学ぶ機会を作っています。これまでに、scratch, hour of codeなどを用いてゲームを作ること、企業にお邪魔し、社員との交流、パソコンの解体、組み立て、など、様々な機会を作ってきました。
 
今年の初めくらいには、vvvvというビジュアルプログラミング言語を使って、映像を作っているコミュニティ、

vvvv Japan Communityに高校生を参加させてもらい、第一線で活躍している方々に直接教えてもらう機会を作ってもらうことができました。

 
・vvvvとは
・第一回目の様子。
 
こうした機会を通じて、定時制の高校に通いながらバイトを一生懸命頑張っていた子が自分でパソコンを購入し、大学に進学したい!と意気込む子まで出てきました。
 
そして、今回フォトグラファーの高野裕二さんからのお誘いで、イベントに招待してもらいました。
高野裕二さんはクラブイベントで写真を撮るなどしていたそうなのですが、高校生が映像を作っていることを話したらVJの枠を高校生にもらえないかクラブ側に掛け合ってくれました。彼らが作った作品を見て、興味を持ってもらい、高校生の枠を作ってくれました。せっかく出るならユニットを作って欲しいと言われ、高校生VJユニットが生まれました。その名も「Dully’s」
1ヶ月後に迫ったイベントに向けて彼らは10本ほど映像を作らなくてはいけなくなり、みんなで作戦会議をしました。
 
・VJデビューするイベント

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最初は、こんなもの作りたい、こんな映像がいいなど盛り上がっていたのですが、日が経つにつれ、打ち合わせも「面倒くさい、いかない笑」など言ってこない、延期になることも多々ありました笑
会場の下見もさせてもらい、イメージを膨らませ、彼らがやる気を出したのは3日前。
ギリギリになり、vvvvを紹介してくれた吉岡純希さんに助けを求めました。
自分たちで頑張って作った映像をどうやって映すか、映像の切り替えをどうするか、当日のセッティングなどを助けてもらいました。純希さんがいなかったらどうなってたことやら。。笑
 
本番前日に純希さんが時間を作ってくれ、作品の最終調整をしてくれました。次の日の朝8時までに最後作品を仕上げて、純希さんに送って本番を迎えることとなり、みんな徹夜で作品を仕上げました。
本番当日、事前に映像の切り替えをテストしようと早めに集まろうと決めました。前日徹夜したメンバーは頭痛いと遅刻!笑
さすがDully’s、安定のだるさ。
だいぶ遅れてきたメンバーと純希さんが合流し、最終調整。パソコンが熱くなって処理速度が遅く、映像がカクカクしてしまうなどトラブルがあったものの、なんとか対策し、本番を迎えられるまでになりました。
みんな本番を前にしてだいぶ緊張していました。
会場に行くと、みんなリハーサルしていて、だいぶガチな雰囲気でした。
フランスから来た黒人のアーティストが来た時にはみんな「あいつガチだ!」と騒いでいました笑
 
様々な人の助けを借りて本番を迎えたDully’s。
 
当日の様子はこちら。
 

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直前までだるいと言っていたやつらがかなり集中して、映像を流し、エフェクトをかけていました。しかもうまい!
実は、事前に作った映像をただ流すだけでなく、会場の音楽を解析して、その場で映像を作りだしているんです。会場の音楽に合わせてエフェクトをかけていくのですが、初めなのに全く違和感がなく、会場の音楽に合った映像を作っていました。
 
かっこいい音楽に自分たちが作った映像をうつし、エフェクトをかける。彼らにとってこんな刺激的な体験は他にないと思います。
1時間の枠を終えた彼らは、次はこんな作品を作る、もっと極めたい!と熱く語っていました。見た人に感想聞いといてと自信ありげに話していた子もいます。
普段はチャラチャラ遊んでいて、ほとんどやる気のない彼らですが笑 こうした機会に触れると驚くほど才能を発揮します。
こうした本物に触れることで彼らの新しい側面が見え、将来の可能性が広がっていくのだと思います。
大人に混ざって、子ども扱いせず、1プレーヤーとして招待してくれた高野裕二さん、彼らの面倒くさがりに諦めず付き合ってくれた吉岡純希さんありがとうございました!
これから彼らがまたVJできる機会や高校生VJ人口を、vvvvの人口を増やしていこうと思っています。
 
Dully’sを呼びたいイベントがありましたら是非お声掛けください!

子ども支援のアイデアソン「クリエイティブケース会議」

福祉などの現場で子どものケースに関して話し合うケース会議というものがあります。通常は子どもの支援に関係する専門職などが集まり会議を行うのですが、PIECESはそのケース会議をアレンジして、企業の人、地域の人といった普段子どもに関わる仕事ではない人を集めて、福祉的な視点の限界を超えられ、子ども達により良い支援のアイデアを作れるよう「クリエイティブケース会議」と名付け、今回第一回目を実施しました。
 
クリエイティブケース会議では、参加者のネットワークの力を最大限活用することととアイデアにさらにアイデアを掛け合わせていくことで、困難な課題も突破していくことができるのでは、という前提のもと会議が行われます。
 

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参加者の自己紹介、PIECESで関わっている子ども達のケースの概要を10事例ほど説明しました。日々、子ども達と関わっていて、こんなことできたらいいのに、こんなことに困っているといった内容をシェアしました。
 
参加者の皆さんから、この子にこんな機会があったらいいのでは!こんな発想はどう?似ているアイデアがすでに実践されてるよ!といったことが次々出てきて、素敵なアイデアがたくさん生まれました。
 
日々、目の間で子どもに接していると抱えている課題の深刻さから、どうすることもできないのではないかと諦めそうになってしまうこともありますが、こうして多様な大人の力を借りることによって、多様な人が集まり、アイデアを出し合うことによって、その突破口が見つかると今回改めて実感しました。
 
深刻な課題を抱えている子達は行政や専門家だけしか見ることはできないのでしょうか。そうした子ども達に市民ができることはたくさんある、そんな希望をこのクリエイティブケース会議では感じることができました。
 
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*今回出たアイデア
 
①生きることに集中する大家族キャンプ
 
様々な課題を抱えている子達に旅とかどう?という話の流れから、自転車旅行など様々話が広がりました。
みんなでキャンプをすることなど、目標を決めて、そこに向かってみんなそれぞれの行き方で向かう。キャンプは、みんなでご飯を作ったり、寝泊りをしたり、自然と役割が生まれやすいから、これまであまり役割を見出せてこなかった子達にも良い機会になるのではないか。
日々様々な課題を抱えているが、一旦忘れて目の前の生きることに集中するキャンプなど面白いのではと盛り上がりました。多様な人が一緒に寝食を共にする。人と人とのつながりを縮め、家族のような関係を作れたらという話になりました。
デイキャンプ→1泊2日→14泊15日といった形で、コースを作ることや10代のママやこれから一人暮らしなどしようとしている子ども達が家事などのできることを身につける機会にもなるのではというアイデアが出ました。
 
 
②ゆるい、小さな仕事作り
 
PIECESに関わっている子達は、今所持金が300円しかないといった子や仕事辞めてしまってお金がないという事態に陥ることもあります。
そうした時に、みんな日払いやお金をすぐもらえる仕事に就こうと探し始めます。目先のお金を意識しすぎるあまり、危ない仕事につながることもあります。
職場ってなんか距離が遠い。もっと身近な人たちの中で仕事を作っていくことはできないのだろうか。
条件だとか成果だけでなく、いてくれるだけ、少し手伝ってくれるだけでありがとうと言われるような仕事はないのだろうか。
もう少し人と人との距離を縮めた仕事はないのかという話になりました。
家事のできることを助け合うサービスや近所の御用聞きをして仕事を生み出している類似のサービスもあります。
PIECESとして、様々な課題を抱える子たち向けのこうしたサービスを作りたいとアイデアが出ました。
 
③ひきこもりを仕事に
 
ひきこもりの当事者が参加していることもあって、ひきこもってしまったら、収入もなくなるし、迷惑もかける、どうしたらいいかというテーマに関して、のアイデアでした。
引きこもること自体は悪いことなのか?そうした前提に立ち、もしかしたらひきこもっていても仕事になることもあるのでは?と発想し、
独居老人だとかの家にいて、話し相手が「いる」だけで嬉しい人もいるのではないか。
独居老人などの家で引きこもることでお金を少しもらえたり、存在を受け止めてもらったり、感謝されたりすることができるのではないかというアイデアが生まれました。
 
これから引き続き、こうしたアイデアを形にするために、より多くの人の協力を募って実施していきます。
第二回目も近いうちに開催予定ですので、ご興味のある方はPIECESまでお問い合わせください。

10代ママ支援スタート!

◆PIECESにおける10代ママへの支援

現在、ある支援機関や団体と連携し、10代ママをサポートする体制を作っています。10代ママからの相談は、主に、とある支援期間からの紹介による相談と、もとからPIECESが関わってきた子たちの妊娠出産の相談があります。
(普段、PIECESでは、他のNPOと連携しながら学習支援や居場所作りを行っているのですが、その卒業生の中には、子どもが生まれたという相談をしてくれるケースがあります。私たちは、途切れず継続的に関わる支援をつくっていきたいため、こうした相談にも対応をしています。)

10代ママが抱えている課題は様々です。
シングルマザーだったり、働いた経験や学歴・資格もないなかで、子育てと仕事を両立させなくてはなりません。子育てをしながら働くことは簡単ではありません。特にシングルマザーの場合、自分自身の親からの支援も受けることができない場合、孤立した状態で子育てをしなくてはならなかったりまします。当然就労にも制限がかかり、かつ高校を中退しているとつける仕事も限られてしまいます。そのような子たちに対して、私たちは主に、悩みを話せる関係作り、居場所作り、高卒認定公的支援の情報提供、窓口への同行、就労支援などを行ってます。

具体的には、まずは丁寧に関わり、悩みを聞けるような関係を築きます。
多くの10代のママが高校を中退しています。それぞれの進路や就職面の希望を聞き、必要があれば高卒認定の勉強を教えます。
子育てに不安を抱えることも多いので、助産師や地域のお母さんに協力してもらい、子育てに対するアドバイスや適切なフィードバックをできる環境を作ったりもします。他にも、保育園の手続きや様々な手当をもらえていないこともあるので、行政の窓口の方々につなげ、適切な支援を受けられるようにつなぎます。就労に関しては、就労支援機関と連携し、情報交換、就職のアドバイスなどを行っています。


◆CYWとして、10代ママの支援をする上で気をつけていること

PIECESは、10代ママに高卒認定試験のための勉強を教えたり、悩み事を聞いたりするなか関係を作っています。今後は、気持ちに寄り添いつつ、地域の団体や人、就労先など10代ママが様々なモノ・ヒトと繋がる援助をしていきたいと考えています。
そのなか、一方的な援助にならないよう、気持ちに寄り添いながら、ゆっくりと関係を作り関わっています。

10代ママと関わる中、複雑な家庭環境を知り、自分は何ができるのだろう、ともどかしく感じる場面は多くありました。保育士として働くなかで、日頃子ども達とは関わっていますが、10代ママの公的な支援方法については知識が不足していたり、10代ママの気持ちに寄り添えているか不安になったりすることがよくあります。

しかし、支援期間の方と情報を共有し、それぞれの立場で自分は何ができるか、という視点を持って今は10代ママと関わっています。ママと年齢が近い立場だからこそ、気軽に話せる存在になれたらいいなと感じます。
そして、ママにとって、信頼できる大人、頼ることができる大人が1人でもできたらいいなと感じているからこそ、今後は仲間と一緒に関わり合っていく体制を作りたいと考えています。


◆今後の展望

今後は、teen pregnancy unitを設立していく予定です。teen pregnancy unitとは、10代ママのための学校やシェルターのことを指し、イギリスやニュージーランドに既存のものがあります。この日本版を作り10代ママの学びの場や子育てサポートを作ったり、就労支援など行ったりしていきたいと考えています。
本日は、そのキックオフのMTGを行いました!
<写真挿入>
公的機関や専門家の方などと連携し、包括的に10代ママをサポートしていきたいと思います。

CYW1期
塚原萌香

学習支援における居場所の形成

現在、PIECESでは各自治体の「学習支援」にコミュニティ・ユース・ワーカー(以下、CYW)を派遣することや、研修の提供を行っています。
貧困世帯(主に生活保護世帯)への支援として「学習支援」が行政主導で行われたのは、5,6年前のことです。そしてその学習支援という支援形態は、今や全国に広がり、東京では多くの自治体が実施しています。
 
貧困世帯への「学習支援」において、わたしたち大人に求められるのは、大きく2つあり、1つは勉強を教えるということと、もう一つは「居場所をつくる」ことです。勉強をいかに教えるかは塾などが知識やノウハウを持っているので、その解説は他の人に譲るとして、私たちは学習支援のなかに、いかにして居場所の要素を形成するかについて整理したいと思います。
 
◆学習支援に居場所の要素はなぜ必要?
多くの学習支援は、生活保護世帯やひとり親・就学援助を受けている生徒たちを対象として運営されています。
彼らは、単にお金がないから塾に行けないということ以上に、彼学習に対する意欲がそもそもなかったり、学習を押し付けられることに反発を覚えていたりする状態にあります。そのような状態になっている背景には、家庭に関心を持ってくれる人がいない(虐待をうけている)、学校でいじめを受けたなどの人間関係における困難があります。
多くの一般の生徒は、家庭や学校の人間関係において安心・安全の獲得を行っていますが、私たちが対象とする子たちは、上述したような事情で家庭や学校で人間関係に困難があるので、それ以外の社会(第三の場所)がその部分をおぎなう必要があります。ここに、勉強を行うための前段階として、「学習支援」において「居場所」を形成する必要がでてきます。
つまり、その子が学習に取り組んだり、興味関心を持ったり、悩みを相談したりする行動の前に、その子自身が、他人や場所に安心・安全を感じる「居場所」をもつ必要があります。居場所の要素とは簡単に言うと、「あなたは無条件で素晴らしい存在」と伝えることです。
 
下記の図のように、私たちは、このような子どもたちとの関わりの段階を、CYWの関わりのフェーズとしてまとめました。
 
 
 

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<図:CYWと子どもとの関わりのフェーズ>
 
 
現在、学校や塾では、勉強ができることが一つのステータスになっていますが、多くの貧困世帯の子たちは、学力的にも遅れている場合が多いです(その背景には、様々な物理的環境の問題、家庭の問題、社会的な問題があります)。
それゆえ、勉強ができない・授業について行けないということがあると、学校や塾に居心地の悪さを感じてしまう子たちがいます。だからこそ、そうした子たちを一番キャッチしている「学習支援」では、勉強一辺倒の価値観を持つのではなく、「居場所の要素」を持たせることが良いのではないかと私たちは思っています。
(子ども食堂のような居場所メインの場が増え、中学生対象の子ども食堂などあれば良いのですが)
 
◆居場所の要素を学習支援に組み込む
では、居場所の要素はどのようにして学習支援のなかに組み込むことができるのでしょうか。
居場所のためには、まずは彼らを「あなたは無条件で素晴らしい存在」として受け止め、信頼関係を築いていくことが重要になります。
 この関係性をつくるためには、大人は、自分自身の価値観を押し付けないというようなマインドセットや子どもと接するスキルが必要になっていきます。
そして、次にポイントになるのは、勉強と居場所の両立です。そもそも学習支援は勉強を目的とする場です。無条件に子ども達が承認される居場所とは真逆の目的を持ちます。勉強と居場所という矛盾する2者のバランスをどうとっていくかが今後の学習支援には重要になってくると思います。
 
そして、その両立のために考え無くてはならないのが、対象となっている生徒が現在どのような状態にあるか?ということです。多くの「学習支援」の対象になっている生徒を分類すると、以下のような図になると考えます。
 

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A君しか場にいない場合は、居場所よりも勉強を優先しても問題なく場が運営されますが、B君がいる場合には勉強と居場所の両立が必要となってきます(中には、対象を絞って学習意欲の高い子たちだけを相手にしている場もありますが、多くの場にB君がいると思います)。
 
現在、幾つかの団体から研修の依頼が来ており、支援の難しい子を見てほしい、スタッフの研修をしてほしいという依頼が来ています。相談内容の多くは、B君(状態:学習支援に抵抗あり)の対応に困っているというようなことです。
では、そのB君にどのような対応をしたら良いのでしょうか。
 
 
◆学週支援におけるCYWの意義
そこで、PIECESでは、B君への対応について、既存の学習支援を運営しているNPOに対して研修やスーパーバイズ、もしくはCYWの派遣を行っています。そして、上述したB君とC君に対応するときに必要な信頼関係の構築と勉強と居場所の両立を行う人材を育成しようとしているのが、CYWの育成事業になります。※CYWとは、はこちら。
 
主にCYWは、C君(様々な支援(学習支援も含む)から漏れをてしまう子たち)へアウトリーチをし、信頼関係を築き、子ども達と社会をつなげていく活動を行います。
アウトリーチとして、地域の人や団体をネットワークし、地域の人や様々な支援機関と連携し、子ども達につながっている人と繋がります。また、芋づる式と私たちは呼んでいますが子ども達にも直接アウトリーチをしていきます。こうしたアウトリーチから、学習支援につながっていない子、はみ出してしまった子達をキャッチし、学習支援や適切な支援につなげることを行っています。
 
 
◆さいごに
ここまで学習支援が広がり、各地で学習支援が行われるようになってきました。
ここまで広がったことで救われる子が増えましたが、これからは広がった学習支援の質が向上していくことが必要になるのではと思っています。
その際に、子どもに接する人たちに対して研修を行い、質の向上を図っていく必要があります。
これからの学習支援には人材育成の研修が必要になっていくことと思います。
 
NPO法人PIECES
コミュニティユースワーカー育成プログラム責任者
荒井佑介

「人の育成」という子どもの貧困の新しいアプローチ

私たちはこれまで主に貧困や虐待など様々な課題を抱える子ども・若者の支援を行ってきました。
これまでは主に子どもの貧困といったテーマで中学3年生に関わり、彼らの高校受験の面倒を見てきました。
学力に遅れがあっても彼らと丁寧に関わることで高校進学を果たす子が多く生まれました。
 
◆なぜコミュニティユースワーカーという「人」を育てるのか
しかし、高校に入れば良いというわけではありません。
高校に入っても学校になじめない、学力がついていかない、中退した、子どもができたと様々な出来事が起こります。多くの支援が中3の時という「点」で関わるのですが、私たちは一度関わった子とはずっと継続的に関わりたいと思い、高校に入っても彼らと関わりを続けました。
 
高校に入ると、これまでサポートしてきた地域の目が届かなくなることが多いです。学区が変わり、アルバイトを始め、彼らは地域の人の目につかなくなってきます。親からのサポートを受けられない子もいます。さまざまな進路をたどっている子ども・若者の抱える課題は、年を追うごとにさらに複雑化し、一つのアプローチでは立ちいかなくなることが多いです。
その子達に誰が、どのように関わるのでしょうか。それこそ「点」で関わるのではない方法で、子ども達に継続的に関わったり、さまざまな課題に対応できる仕組みはないのでしょうか。
 
そんな思いから、私たちはこうした子ども達を支援するために、コミュニティユースワーカーという名前で、人材育成を始めることにしました。
特定の課題を解決する場をたくさん作るよりも、様々な課題に柔軟に対応出来る「人」が、関わる中で見えてくる困りごとに対応したり、必要な資源を繋げたりできることも必要なのではないか。そう思って、私たちは「人」の育成を始めたのです。
 
 
◆人のネットワークによる包摂
一人一人、やりたいことや、フィットする場所は異なりますよね。
先に述べたように、一人一人対応するためには、いろいろな枠組みにとらわれず、柔軟に対応していかなければなりません。
たとえば、一人の男の子は人は、学習支援で勉強することや人と話すことに前向きになり、プログラマーになりたいと話しました。
そこで私たちは、知り合いからエンジニアを探し、彼にプログラミングを教える機会を作りました。企業の方々にも協力してもらい、彼は今アプリを作ろうと奮闘しています。そして大学に行きたいと話すようになりました。近くでプログラミングをやってる様子をみて、僕も実はプログラミングをずっとやりたかったと話し、今ではエンジニアになってグーグルに入る!と意気込んでいる子もいます。その他には、音楽をやりたい子がバンドチームを作り、ファッションが好きな子はモデルやDJと一緒にファッションショーを開催することもありました。こうした活動を続けていくうちに、学習支援には行きたくないが、こうした場であれば言ってもいいという子達に出会うこともありました。
 
このように、私たちは、信頼関係を構築し、子どもたちの興味関心を引き出し、その子に合わせた支援の形や、社会との 関わり、新しい人との出会いを作っていきます。また、それらの個別的かつ多様な関わりは独立しているわけではなく、それぞれが繋がっています。それぞれが繋がっていくことで、子ども達に選択肢が生まれます。このように、それぞれの子たちが、それぞれに多様な大人・多様な世界とつながり、とりこぼされる子がいなくなるような「包摂」を目指しています。
 
◆コミュニティユースワーカーという「ハブ」
そんな人のネットワークによる包摂の中心となるのが、コミュニティユースワーカーだと考えています。
コミュニティユースワーカーはこうした子ども達と社会をつなげるハブの存在を目指していきます。
ハブとなるCYWを中心に、人と人とをつなげていくことで、子ども達をサポートするネットワークができます。このネットワークこそ、様々な課題を抱える子ども達の様々な課題を柔軟にサポートしていく仕組み=セーフティネットになります。
学校に行けなくても繋がった「人」を通じて、学習機会にアクセスできたり、親のサポートが得られない子でも、また10代のシングルマザーも子育ての面でも進路や就職の面でもサポートできます。
 
私たちは制度や組織、場といった支援の周りに、人のネットワークを巡らせることによって、より包括的かつ柔軟に子ども達をサポートしていきたいと思っています。
コミュニティユースワーカー1期生がスタートして早2ヶ月、様々な団体、組織と連携して活動がスタートしています。コミュニティユースワーカーのこれからの動きをこれからブログなどで発信していこうと思います。
 
NPO法人PIECES
コミュニティユースワーカー育成プログラム責任者
荒井佑介